8月7日(水)午前11時頃、プロ野球読売巨人軍前監督の長嶋茂雄さん(66)方に包丁を持った男が侵入した。長嶋さんといえばテレビCMでもおなじみだが、セキュリティのトップ企業、セコムの“顔”である。当然ながら警備は万全のはず。ところが、在宅中だったために警備システムのスイッチが切ってあったらしい。
この笑い話のような事件は、セコムの株主にとって笑い事では済まされなかった。事件当日のセコムの株価は5830円(高値)だったが、翌日から下がり始めて、半月後の8月22日には5080円(安値)まで下落したのである。
自宅で記者会見に応じた長嶋さんは、「警察のチームプレーで(犯人が)捕まってよかったが、うちはガードが甘かった」と反省の弁を述べた。確かに、犯人が67歳の老人で、お手伝いさんの大声で逃げ出すような小心者だったからよかったものの、屈強な凶悪犯だったら惨事はまぬがれなかったに違いない。
実は、長嶋さんに限らず、日本人の危機意識は決して高くないのが実態だ。
日本能率協会が発表した『新任取締役へのアンケート』の結果を見ると、それが浮き彫りにされている。今年の1〜6月に選任された上場企業の新任取締役を対象に行った調査で、301人から回答を得たものだ。相次ぐ企業の不祥事については、「経営トップの認識の甘さ」や「企業風土」が原因と、7割以上が回答している。
しかし、自分の会社について聞かれると、10.33%が「不祥事の心配は全くない」、56.5%が「あまり心配ない」と回答しているのだ。「非常に心配」と答えたのはわずか2.3%だった。実に7割弱が、「我が社に限っては大丈夫」と考えているのである。
この数字を見ると、日本の企業が危機管理に取り組む場合には、まず取締役の意識改革から着手しなければならないことが明白だ。そして、全従業員および子会社にまで、意識改革の輪を広げていく必要がある。でなければ、どんなに優秀な設備やシステムを導入しても、セキュリティのレベルを高めることはできない。長嶋さんのように、スイッチを切ってしまうからだ。