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インタビュー 社内に「隠れニート」を作らないために経営者がすべきこと

●人事制度改革および役員制度改革に関するコンサルティングを数多く手がけるトーマツ コンサルティングのヒューマンキャピタル ディレクター寺崎文勝氏は、同氏が執筆した『ニート世代の人事マネジメント』(中央経済社)の中で、「現在、日本で大きな社会問題となっている“ニート”(働いておらず、学校にも通っていない、職業訓練も受けていない若者)は、“個の問題”として扱われがちだが、“経営上の課題”としても捉えることができる」と述べている。今、職場で働いている若者の中にも“隠れニート”が潜んでいる可能性があり、「それはすなわち企業経営の問題に他ならない」というのだ。
●若手社員の隠れニート化はなぜ起こるのか。また、若手社員を隠れニート化させないための人材マネジメントとはどういったものか。さらに、そのために企業が果たすべき社会的責任とはどういったものか。寺崎氏に話を聞いた。

聞き手/土屋泰一、山田久美
文/山田久美
写真/佐藤久
2006/5/17公開

 
 
 
寺崎 文勝(てらさき・ふみかつ)

 事業会社の人事部門、シンクタンクのコンサルティング部門等を経て現職。  人事制度改革コンサルティングおよび、役員制度改革を数多く手がけている。 主な著書:
『ニート世代の人事マネジメント』(中央経済社)
『わかりやすいCSR経営入門』(同文舘出版)
『人事マネジャーの仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)
『勝てる会社の人材戦略』(総合法令出版)
『役員報酬・評価改革のすすめ方』(中央経済社)
などがある。

トーマツ コンサルティング株式会社

 経営戦略からその実現・導入に至るまで一貫したサービスを提供する経営コンサルティングファーム。
 グローバルなネットワークを誇る国際的会計事務所デロイト トウシュ トーマツのメンバーであり、監査・税務・コンサルティング・ファイナンシャルアドバイザリーサービスを包括するトーマツグループの一翼を担う。
 組織・人事コンサルティングの領域では国内最大規模のコンサルティングファーム。
URL:http://www.tc.tohmatsu.co.jp

失われた10年を経て大きく変わったこととは

――寺崎氏は『ニート世代の人事マネジメント』という著書を執筆されていますが、そもそも執筆されようと思われたきっかけから教えて下さい。

寺崎氏:  バブル崩壊後、業績の悪化に悩まされていた日本企業の多くが、米国に倣って成果主義を導入しました。そして、失われた10年をどうにか切り抜け、ようやく景気が上向きになってきた今、職場に以前のような活気が戻ると思いきや、すっかり疲弊してしまっている企業の実態を数多く見せつけられたのです。一体、なぜ、こういったことが起こってしまっているのか―。その根本原因を探りたいと思いました。

 そんな中、“ニート”という言葉を頻繁に耳にするようになりました。大きな社会問題の1つとして、20〜30代の若者の“働く意欲”に対する世間の関心が急速に高まってきていたのです。その時、私の中に直感が働きました。「もしかして、若者たちが働く意欲を失っていることと、疲弊した職場、すなわち、本来、働き盛りであるはずの中高年のビジネスパーソンが働く意欲を無くしてしまっていることとは、密接に関係しているのではないだろうか?」と。要するに、中高年のビジネスパーソンが働く意欲を見出せないような疲弊した職場で、若者が働く意欲を見出せるはずがないではないかと考えたのです。

 これまで、ニート対策については、ニート本人、親、学校、地域社会や国がどう関わるかという観点で論じられることが多く、ニート問題の当事者であるはずの企業が、“自社の問題”として高い認識を持つということはあまりなかったように思います。

 しかし、疲弊した職場環境の中で、意欲を持って職場で働いていた若手社員がその意欲を失ってしまい、2度と働こうとしなくなったり、働く意欲もないまま生ける屍のごとく仕事をこなしているだけの存在になってしまったら、それは若手社員にとっても企業にとっても大きな損失です。それがこの本を執筆しようと思ったそもそものきっかけです。

 ですから、この『ニート世代の人事マネジメント』という本は、表向きは、“若手社員のマネジメント手法”といった内容ですが、裏には、中高年の管理職層に対する応援や叱咤激励といったメッセージが込められているのです。「あなた方が働くことの価値や幸福感をきちんと示してあげなければ、働く意欲を持って入社してきた若手社員が、入社後、ほんの数ヶ月で次々に辞めていってしまったり、隠れニート化させてしまうことにつながります。ですから、どうかあなた方ご自身が、仕事にやりがいを見出して生き生きと働き、愛情を持って若手社員を育ててあげて下さい」と言っているのです。

――失われた10年を過ぎて、景気が回復してきているにもかかわらず、職場が疲弊している最大の原因は何だと思われますか。この10年間の前後で、一体何が変わってしまったのでしょう。

寺崎氏:  確かに景気は回復傾向にあり、企業の業績もこのところ総じて上向きです。しかし「この利益は、一体どこから来たものなのか?」ということを深く掘り下げて考える必要があると思います。

寺崎文勝氏
寺崎文勝氏

 まず、間違いなく言えることは、失われた10年の間で、『終身雇用』という、従来、日本企業が固く守ってきた約束が反故にされたということがあります。

 以前の日本企業は、従業員に対して、良くも悪くも、「一生涯、雇用を約束して育ててあげよう。生活もできる限り面倒みてあげよう」というスタンスでした。ところが、バブル崩壊によって、コスト削減の名の下、多くの企業が、リストラを強行したり、成果主義を導入したりしたほか、家族手当の廃止や、社宅や独身寮など福利厚生施設の削減を行いました。

 もちろん、不況の真っ只中、企業が生き残るためには止むを得ない手段であったでしょう。実際、そのことによって企業の多くが業績を回復し、危機を乗り越えることができました。ところが、逆に、そのことが、今の疲弊した職場を生んでしまっているのです。

 リストラによって従業員が大幅に削減されたことによって、従業員1人当たりの仕事の負荷が増え、残った従業員は長時間労働を強いられるようになりました。日本企業も米国企業に習い、贅肉の無い“筋肉質”の人員体質を目指したわけですが、それが、結果的には、従業員を心身ともに疲弊させる大きな原因の1つとなってしまっているのです。

 実際、この10年間、厚生労働省はビジネスパーソンの長時間労働に対する強い危機感を持っており、企業に対して指導なども行っています。また、メンタルヘルスに関する調査を毎年実施している(財)社会経済生産性本部の中にあるメンタル・ヘルス研究所では、「メンタルヘルスが原因で長期休職をしているビジネスパーソンがここ数年で急増している」と報告しています。メンタル面に限って見ても、ビジネスパーソンの疲弊はデータとして顕著に表れています。

 それに対し、「業績が上向きになってきたのだから、企業は従業員を増やせば良いじゃないか」と思うかも知れません。しかし、企業側には、「せっかく筋肉質にした人員体質を、再び贅肉体質に戻してしまうのではないか」といった恐怖感があり、中々思い切った増員に踏み切れないでいるのです。




 
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