異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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リポート

地球温暖化対策の実像/ロンドンからの報告

「神話」か? 「真実」か?[後編]

元英財務相の痛烈な政権批判

自由な世界を守り、発展させてゆくために

 英サンデー・タイムズ紙(2008年4月20日付け)のインタビューに応じたローソン卿は、「排出量取引は中世の免罪符(のようなもの)であり、あやしげな証書をもらって安心していても、CO2の排出は本当には減らない」「本気でCO2を減らすのであれば、広範な環境税を課すべし、今の政府にそれができるか」という、鋭い切り口を向けている。現在の議論の有意性に真っ向から疑念を挟んでいるのである。

 さらに、同卿は「私は偏狭であることを憎む。私が寛容でなくなるのは、寛容さを許さないことに対してだ」と発言している。自由な市民社会における言論を制約し、あたかも唯一の真実のような主張にこだわり、既定路線を超えるものには冷たい目を向ける……まさに、チェコのクラウス大統領と同様に、同じ脅威に対して警告を発しているのである。  欧州は排出量取引を中核として、気候変動に対する議論は一枚岩のような報道もなされているが、欧州内でも、さまざまな意見が存在する。一方、欧州で起こった気候変動の議論は、すでに世界に伝播し、米国や日本の政策に大きな影響を与えている。さらに、多くの賛同者を得るに至っており、経済成長の著しい中国やインドも世界の議論を無視できないところまできている。

 一方で、大規模な製造業が衰退しつつあり、かつ中東欧に大きなエネルギー効率改善の余地を抱える欧州起源の気候変動の議論は、排出量取引を含む金融手法と一体化して発展してきた、という側面を持つ。気候変動をめぐるビジネスは、すでに大きな広がりを得ており、特に金融機関が参画することで「CO2の価格」という、誰も手に取れないもの、金庫にしまっておけないもの、正確な計量もできないものが世の中を闊歩している。しかもポジティブなイメージで。批判するものには、誰でも容赦なく世論が攻撃する。あたかも中世の「魔女狩り」のように。「神話」が堂々と歩いているのかもしれない。

 かつて、社会主義の理論的支柱となったドイツ生まれのカール・マルクスは、「万国の労働者よ、団結せよ」と叫んだ。当時の過酷な労働条件に苦しんでいた多くの労働者たちは、マルクスの言葉に酔った。

 気候変動の議論でIPCCが、「地球は温暖化している、救えるのは今しかない」と言っていることに対し、世界を挙げてエネルギーの効率的な利用に努めることは、現代に生きるわれわれの責務であると確かに思う。しかしながら、社会主義体制が結果として崩壊したように、継続困難な進め方は、必ず崩壊する時が訪れる。常に批判の目を持ち、持続的成長が可能な社会を考えることが、気候変動の問題に取り組む際の前提でもあるのでは、と感じられてならない。
 

浅妻一郎 氏浅妻 一郎 氏 (あさづま いちろう)

東京電力 ロンドン事務所 前副所長

1959年1月23日東京都生まれ。1981年慶應義塾大学商学部卒業。同年東京電力入社。

1984年5月より本店原子燃料部において主に北米や英仏企業からの燃料調達業務を担当。1995年7月から3年間は電気事業連合会原子力部に派遣された。1998年7月からは原子燃料部燃料加工グループマネージャーとして英・仏・ロ・ベルギー等の事業者を相手に契約交渉を経験した。

2002年からは関連事業部事業支援グループマネージャーに。一転して石油・ガスや熱供給、リゾート事業などの関連事業部門への出資、債務保証業務等を担当した。また、子会社・関連会社の保険を集約するテプコ・リインシュアランス・カンパニー(東京電力の100%子会社:英国法人)の取締役も務めた。

1989年より2年間、国際大学大学院国際関係学研究科に留学。国際問題に強い関心を示す。

2005年より副所長としてロンドン事務所駐在。ロンドン事務所ではエネルギー安全保障や気候変動などのトピックスをカバーするとともに、事務所内業務を総括。2008年6月をもってロンドンより帰国。現在、東京電力(株)本店原子燃料サイクル部部長代理。

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