異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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日本の技術力-3

地球温暖化問題を追い風に

世界に挑む日の丸風車の勝算

取材/文 岸上祐子
2007年8月23日(木)公開
主戦場は、飽和し始めた欧州市場ではなく米国とアジアに

 利用可能なエネルギー量が多く、クリーンな新エネルギーとして注目される風力発電。地勢が平坦で安定した風が得られる国が多い欧州で先行して普及が進み、デンマークでは全電力供給量の18%、ドイツ、スペインでは8%が、それぞれ風力発電で賄われるまでになった。出遅れていたアジア市場も拡大しており、エネルギー確保に悩むインドや中国での普及が進み始めている。世界的に需要は拡大を続けており、2006年度には新規に1500万kW分の風力発電設備が導入され、市場規模は年間1兆円に達したようだ。

 急速に成長する世界市場に乗り遅れまいと、日本企業も事業拡大を急いでいる。世界市場を視野に、風力発電技術の開発に国内で最も力を入れてきた三菱重工業。同社は風力発電ビジネスに1980年から乗り出しており、1990年から91年にかけて、米カリフォルニア州に660基を納入した実績を持つ。その後、一時低迷したものの、2000年前後から実績を伸ばし始め、今年5月末には、世界での受注実績が累積で3858基、374万kWに達した。同社原動機事業本部の上田悦紀主席部員は「わが社の風力ビジネスにも、ようやくフォローの風が吹き始めた」と話す。

 同社の視線は国内市場を超え、世界へと向かっている。なかでも力を入れているのが米国、そして成長が期待できるアジア市場だ。実は、風力発電先進国のデンマークやドイツでは、すでに飽和状態となっており、「風力発電の主戦場は欧州から北米やアジアへと移っている」(上田主席)。一方、国内市場は、大型風車の導入が急速に進み始めたとは言え、設備導入量は2006年度末までの累計で約149万kWと国別導入量で13位にとどまる。

 世界的にみると、市場が急拡大する一方で企業の集約が加速している。欧州では、風力発電機専業メーカーの淘汰が始まっており、今年6月には、重電大手の仏アルストムがスペインの風力発電機メーカーであるエコテクニアの買収を発表した。

 上田主席は「米ゼネラル・エレクトリック(GE)やドイツのシーメンスなど、発電設備を手がける大手重電メーカーがシェアを伸ばしている。最終的に、世界市場に残るメーカーは5社くらいだろう」と分析したうえで、「わが社の世界シェアは現在12位。輸出に力を入れることで増産し、世界シェアで5位以内に食い込みたい。トップグループに入っていないと生き残れない」と表情を引き締める。

 三菱重工は世界戦略の一環として、石炭採掘に使われる高負荷の機器を作ることを得意とする石橋製作所(福岡県直方市)と提携し、基幹部品の一つである増速機の増産体制を整えた。風力発電研究の第一人者で足利工業大学副学長でもある牛山泉教授は「風車のパーツで最も重要なのは、ナセルの中にある増速機と呼ばれる歯車だ」と指摘する。歯車は普通、回転数を落とすために使うが、大型化するほど回転速度が遅くなる風車では、発電機を駆動するために回転速度を上げる必要がある。しかも、風力が一定せず、回転数が常に変動する風力発電設備では、歯車にとって非常に過酷な条件の下で負荷のかかる使い方になる。この増速機の技術を持つ会社は限られており、風力発電の世界では、企業買収なども進んでいる。

 上田主席は石橋製作所の技術力を高く評価し、次のように説明する。「歯車は日本が得意とする精密加工製品。見かけだけを真似するのなら簡単だが、壊れない本物を作るにはミクロンレベルの精度が必要で、難しい。運転中の変形まで考えて歯形を微修正したうえで、熱処理や組立てなどの品質管理がしっかりしていないと、設計からのズレがたまって故障の原因となりやすい。その点、同社の技術は十分信頼できる」。産炭地だった筑豊地方にあり、日本を支えた石橋製作所の技術力が、新たなエネルギー生産にも生かされるわけだ。
 

■欧州市場には後れを取るが日本の導入量も着実に増加している

日本における風力発電導入量の推移

日本でも2000年以降、風力発電設備は急速に増えている。しかし、設置コストが高くつくうえ、安定した風力が得られないなどの問題もあり、電力供給量に占める割合は1%未満にとどまる(出典:NEDO)
 

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