異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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重要性高まる適応策-4

食卓に忍び寄る温暖化の影
果樹や稲作だけでなく漁業にも

取材・文/滝川徹
2009年3月23日(月)公開
温暖化の影響は食卓にも

 地球温暖化によって、私たちの「食」に赤信号が点滅している。色づかないブドウ、皮が浮いたミカンなど、気温上昇による果物への異変はすでに全都道府県で起きており、水稲も九州を中心に品質が大きく低下。他方、海水温の上昇に伴い漁業資源にも危機が忍びよっている。海外に目を向ければ、オーストラリアでは大干ばつによって小麦価格が高騰するなど、食料自給率40%の日本の食卓をも揺るがす。こうしたなか、2008年6月には環境省が『気候変動への賢い対応──地球温暖化影響・適応研究委員会報告書』をまとめるなど、この問題に国や自治体も本格的に取り組む姿勢を見せはじめた。食料生産の現場で温暖化を背景にした影響がどう出ているのか、それをどう克服しようとしているかを探った。

 「昨年はブドウが十分着色しなかった。こんなのは初めての経験」。長野県上田市のブドウ農家、水無瀬良雄さんが不安そうに語る。赤ワインの原料となるメルローやカベルネ・ソーベニョン種などを扱っているのだが、いつも真っ黒に色づく果実が、昨秋はピンクがかった赤色にしかならなかった。「あれでは赤ワインじゃなくてロゼになってしまう」と心配する。収穫時期も平均で1週間早かったという。

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹研究所の森永邦久・研究管理監は、「高温化の影響は果樹に一番大きく現れている」と話す。「果樹は一度植えると簡単には別の種類に切り替えできないし、影響が蓄積する。(米や野菜のように)植付け時期を変えるのも困難」として、「これまでも、10年間のうち何回かは高温の年もあったが、近ごろはその頻度が高くなっている」と温暖化の傾向を懸念する。

 農研機構が全国の農業関係公立試験研究機関に温暖化の影響をアンケート調査したところ、果樹の生育や収量、品質では全47都道府県から影響が出ているとの回答を得た。野菜や花は8割、水稲では7割、麦や大豆、畜産でも2〜3割の都道府県が「影響あり」と回答している。果樹の被害で特に目立つのは、ミカンの「浮皮症」とブドウやリンゴの「着色不良」だった。

 浮皮症とは、ミカンの果実と皮が中ではがれる現象で、実がぶよぶよした感じになるだけでなく、箱詰めするとその部分が破れて腐りやすい。成熟期に高温や多雨が重なると発生しやすく、収穫が遅い品種の方が影響が大きいという。

 また、ブドウやリンゴの着色不良とは、熟しても果実が本来の色にならない現象。高温で色素の生成が妨げられるのが原因。「味への影響は少ないが、外見を重視する日本の市場では商品価値が大きく低下する」(森永研究管理監)。このため、ブドウでは幹の表面の樹皮部分を輪状に切りとる(環状はく皮)ことで、枝に残った栄養分が果実にいきやすくして、着色を促す対策などが行われている。浮皮症には新しい植物ホルモン剤を使った対策が試みられている。
 

通常のブドウ
着色不良のブドウ
通常は黒みがかった濃い色(写真左)になるが、着色不良のブドウは青いままか薄い紫色程度にしかならない。温暖化が色素の変化を妨げることが原因。市場では見栄えも重視されるため、製品の価値を下げる結果になる(写真提供:農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)
 
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この記事の目次
重要性高まる適応策-4
食卓に忍び寄る温暖化の影
果樹や稲作だけでなく漁業にも

温暖化の影響 異常気象/生態系

エネルギー政策 日本

国際交渉 COP/UNFCCC