異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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特集

環境・エネルギー課題解決のための賢人会議─3

ポスト京都−日本の戦略

実効性の高い温暖化対策に向けた国際合意を
講演:山口光恒
(東京大学先端科学技術研究センター客員教授)
主催:日経BP社(ECO JAPAN/日経エコロジー/日経ビジネス)
協賛:佐川急便ソニーTDK電気事業連合会東芝三菱電機ヤマト運輸(50音順)
取材・構成/岸上祐子 写真/川本聖哉
2007年6月28日(木)公開
京都議定書の長所と短所

 6月にドイツのハイリゲンダムで開かれたサミット(主要国首脳会議)では、日本から参加した安倍首相や米国のブッシュ大統領から、地球温暖化防止に向けた新しい提案がありました。これらの内容も踏まえつつ、日本が今後どういう対応をとるべきかお話ししたいと思います。

 最初に、京都議定書について評価すべき長所と、今後の枠組みを考える際に是正すべき短所の両方を指摘したいと思います。京都議定書の評価すべき点は、国際的な温暖化対策の具体的第一歩であり、社会的な関心を深めることに効果があったことです。私も政府審議会の委員ですが、京都議定書という目前の目標が無ければ、ここまで議論されることもなかったかもしれません。また、いろいろな意味での柔軟性が入ったことが京都議定書の評価すべき点だと思っています。

 では、京都議定書の何を改めなくてはいけないのか。まず「初期配分」の問題点があります。欧州の場合は、東西ドイツの統合や英国のエネルギー政策の自由化などがあったため、温暖化対策とはまったく関係のないところで、排出量は下がる構造がありました。だから、1990年を基準に欧州が−8%、日本が−6%という京都議定書の目標は、日本にとって欧州よりもはるかに厳しいものだったのです。

山口光恒氏
6月12日、「賢人会議」が行われたよみうりホール(東京・有楽町)は、たくさんの来場者で溢れた。日本人の環境問題への関心の高さをうかがい知ることができる。
 次に、米国の離脱があります。私は、米国は京都議定書に合意すべきではなかったと今も思っています。米上院では1997年6月に、主要途上国の参加しない、あるいは米国経済に悪影響を与えるいかなる議定書も批准しないという決議をしました。それを承知で、「米国が途上国の排出抑制に固執したために会議が決裂した」という状況を避けるために、同年12月の京都会議では議定書採択に賛成しました。クリントン大統領は京都会議の後、京都議定書の批准を上院に一度も要請していませんし、京都議定書の目標達成に向けた実効性のある政策もまったく打ち出していません。この間に、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)排出量は増え、現在のブッシュ大統領が就任したときには1990年比で15%も増えていました。これは目標達成が不可能な水準で、ブッシュ大統領が京都議定書からの離脱を宣言したのは、当然のことと言えるかもしれません。もし京都会議が決裂していれば、世界は米国を非難したかもしれませんが、2、3年後にもう一度交渉して、米国がその義務を果たすようなものができていたはずです。この方が温暖化対策の条約として実効性がよほど高かったのではないでしょうか。

 サミットでも途上国からは「共通だが差異のある責任」で、温暖化は先進国の責任だという意見が出てきます。では、先進国にどの程度責任があるかというと、気候変動枠組み条約の下部機関会合(SBSTA)の時に出てきた報告書にデータがあります。これによると、CO2だけではなくメタンなどほかの温室効果ガスを入れた数字では、1890年から2000年にかけてOECD(経済協力開発機構)諸国の排出量はいずれも40%台です。一般に思われているほど、先進国ばかりに責任があるわけではありません。

 2012年には、途上国の排出量がOECD諸国を上回ります。このときに「共通だが差異のある責任」をどのように捉えるかを考えなくてはいけないと、私は思います。だからこそ、米中など主要排出国が参加しない国際枠組みは意味がない。以上が京都議定書の教訓です。これに加えて、日本について見ると、あまりに初期配分が不公平です。今後どのような枠組みができるにせよ、このようなことは容認できないと思います。
 

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