異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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ナショナル ジオグラフィック・スペシャル

シリーズ「地球の悲鳴」

NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版
NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版

ビッグメルト
消える氷の大地

ナショナル ジオグラフィック日本版 2007年6月号
(写真=ジェームズ・バローグ)
文/ティム・アペンゼラー(本誌英語版編集部)
2007年5月31日(木)公開
科学者の予想を上回る速度で
南極やグリーンランドが解け始めた

 高山の氷河から極地の広大な氷床まで、地球上のあらゆる場所で、誰も予想しなかった勢いで氷が解けている。1991年から南米ボリビアのチャカルタヤの氷河を観測してきた科学者たちも、まだ数年は安泰とみていた。地球温暖化が進めば、氷河が解けるのは十分予想されていたが、そのスピードは科学者の予想を超えていた。気温の上昇ペースからは考えられないほど急速に、氷の融解が進んでいる。

 氷河や氷床は、わずかの気候変動にも敏感に反応することがわかってきた。グラスの中の氷が一定のペースで解けるのとは違い、氷河や氷床はいったん解け始めると、どんどん融解が進む傾向がある。チャカルタヤの場合は、氷河の一部が解けて黒っぽい岩が露出したため、太陽熱をよく吸収するようになり、融解が加速した。生じた変化がさらに悪影響を及ぼす負のフィードバック効果だ。そうして山岳地帯や極地の氷床は急激に縮小しつつある。

 21世紀の終わりまでには、アルプスの氷河はほとんど消えるだろう。アンデスやヒマラヤ山中に散らばる小さな氷河の寿命はせいぜい数十年程度だ。ボリビアやペルー、インドなどでは、氷河から流れてくる水を、飲料水や農業用水、水力発電に利用して多くの人々が生活している。氷河が消えれば、その暮らしは大打撃を受けるだろう。

 グリーンランドと南極を覆う広大な氷床にしても、解けるペースが突然速まったため、いつまでもつかは専門家にもわからない。グリーンランドの氷床を調べている米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所のエリック・リグノットによると、融解のペースはこの10年ほどで2倍になったという。「5年前なら、『絶対あり得ない』と言われていたような現象が、いま現実に起きています」。グリーンランドと南極の一部にあるもろい氷床が崩壊すれば、海面が上昇して世界各地の島々や沿岸地域が水没する。低地にあるバングラデシュやオランダ、米国フロリダ州などが水浸しになり、何千万もの人々が生活の場を失うことになる。

 海面が一気に上昇し始めるまで、もはや猶予はないのに、この期に及んでまだ多くの科学者が、石炭や石油、天然ガスの消費を大幅に減らせば最悪の事態を回避できると考えている。だが、地球温暖化は着々と進行し、これまで通りの経済活動をあと50年続ければ、完全に手遅れになることはほぼ間違いない。

 地表に露出している太古のサンゴは、過去にも気候が温暖化し、海面が上昇した時期があったことを物語っている。米国フロリダ半島の先端のキー諸島やバミューダ諸島、バハマ諸島の沿岸からやや内陸にみられるこうしたサンゴは、今からおよそ13万年前の温暖な時期(間氷期)に形成された。当時は、海面が今より4.5〜6m高かった。つまり、現在グリーンランドにある氷床の大半が、解けた水の状態で海面を押し上げていたということだ。

 当時の温暖化が進んだ理由は、化石燃料から排出される温室効果ガスが増えたためではない。地球の自転軸の傾きと公転軌道が変わったことが理由で、北極圏の夏の気温は今よりも3〜5℃高かった。現在の温暖化のペースからすると、北極地方の気温が当時の水準に達するのは時間の問題だろう。

 気温がそのように急上昇しても、氷床は数千年かけてゆっくり解けて小さくなるにすぎない――。コンピューターによるシミュレーションがはじき出す予測は、たいていそんな内容だ。こうした予測が正しければ、海面の上昇は差し迫った脅威ではないということになる。だが、グリーンランドの氷床で実際に起きている事態を見れば、とても悠長に構えてはいられない。
 

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