エコキュートはまだまだ普及してほしいし、エアコンも、もっと活用してほしいところだが、それでも日本の家庭は、ヒートポンプのポテンシャル実現への曙光が見えているように思われる。しかし、ほかに目を向けると、これがなかなか心もとないのである。
まずは日本の業務部門。この部門には、オフィスビルや店舗などが含まれるのだが、家庭部門よりも、暖房用エネルギーに占める電力の割合が一段と小さい。日本エネルギー経済研究所のデータよると、現在も1割を切っている。しかも特筆すべきは、冷房用のエネルギーに占める電力の割合で、家庭用では基本的にすべて電力が占めるのに対し、業務用では半分程度に止まっているのだ。
この原因としては、まず、競合する機器が存在することが大きい。都市ガスの燃焼熱を利用するガス吸収式空調システムがそれで、省エネ性では電気ヒートポンプ式空調システムにはかなわないものの、初期投資が抑えられるなどの経済性が受け入れられ、これまでのところ、普及の拡大が続いているのだ。
もう一つの原因は、「オーナー・テナント問題」といわれる「省エネのバリア」だ。2007年末に取りまとめられた経済産業省総合資源エネルギー調査会の省エネルギー部会の報告書「今後の省エネルギー対策の方向性について」でも、問題として取り上げられている。
オーナー・テナント問題とは、エネルギー管理が、設備を所有するビルオーナーと実際にエネルギーを使用するテナントに分かれていることにより、ビル全体の省エネが進みにくいという問題を意味する。ビルオーナー側は、ビルの省エネ性が、ビル自体の評価や家賃収入に反映されにくいなどの事情から、省エネ投資を行うインセンティブが弱い。一方、テナント側は、共益費に光熱費が包括的に含まれるなどの場合に、省エネに取り組むインセンティブが弱くなる。このような構造があることで、特に設備の初期投資を抑える傾向が強まる。結果として、高い省エネ性を特徴とする半面、初期投資が大きくなりがちな電気ヒートポンプ式空調システムにとっては厳しい状況が生じるのである。
2009年度の施行が決まった省エネ法の改正では、業務部門の対象範囲が増える。このため、エネルギー使用を把握・報告する義務を負うテナントが増えると想定される。省エネルギー部会では、これによって、オーナー側がテナントに対してエネルギー使用状況などの情報を提供し、さらには可能な範囲でテナントと協力しながら、的確な省エネルギー対策を行うことを期待している。しかし、省エネのバリアを越え、その実力をいかんなく発揮してもらうために、ヒートポンプには一層のコストダウンを期待したい。