異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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最前線の挑戦者たち

三洋電機「エネループ」[前編]

乾電池に代わる充電池を求めて
答えのないプロジェクト発進

三洋電機 トワイセル技術部部長
田所幹朗
写真・文/永井隆
2009年2月26日(木)公開
小さな開発チームの大きな可能性
三洋電機 モバイルエナジーカンパニー アルカリ充電池事業部トワイセル技術部 部長 田所幹朗
三洋電機 モバイルエナジーカンパニー アルカリ充電池事業部トワイセル技術部 部長 田所幹朗。1962年生まれ。神戸市出身。神戸大学大学院工業化学専攻。1987年三洋電機入社。研究開発畑で水素吸蔵合金など、一貫して電池畑を歩む。2500mAhの高容量ニッケル水素電池開発のチームリーダーなども務め、エネループ開発では初めてのプロジェクトリーダーに。「大きな決断に迫られ、一か八かに賭けたり、ハラハラドキドキで開発しました」

 「先入観があったら、新しいものは決して出来ない。社内の雑音は気にするな。実験やマーケの客観的なデータを大切にしろ。データのまま、素直に行ったらどうだ」

 「はい……」

 大阪・守口市にある三洋電機本社。電池事業の先輩技術者、宮崎徳之(のりゆき)は、後輩の田所幹朗(もとお)にこうアドバイスを送る。2人は神戸大学工学部でも先輩後輩の間柄だ。

 2005年の年明け。このとき宮崎は品質統括を担当していたが、田所が初めてリーダーを務めるプロジェクトを、何としても成功させてやりたかった。それは、大学の5期後輩という個人的な関係だけではない。田所の小さなプロジェクトが、一般家庭で使用する乾電池そのものの“文法”を、大きく変えてしまう可能性を宮崎は認めていたからだ。

 同じ日の深夜、群馬県高崎市にあるニッケル水素電池を生産する三洋エナジートワイセル。工場敷地内の研究所には、30代の若手技術者がまだ2人残っていた。矢野尊之(たかゆき)と泉康士である。

 「遅くまで大変だな、泉。先に帰るのがワルイよ」

 「あっ、矢野さん。そんなことありませんよ」

 「泉に倒れでもされたら、すべてがパーだ。泉がみんなを支えてくれているんだから。風呂に入っているか? 食事はちゃんと取ってるか?」

 「さっき、ちょっと家に帰って、カミサンの料理を食べてきました。工場の人たちもいつも以上に応援してくれてるし。まあ、僕は大丈夫です。それよりも矢野さん。今回のプロジェクト、今までとは、まるで違うと思います」

 「どういうふうに?」

 「答えがないという気がします」

 「確かに。今までなら高容量にするとか、具体的な技術目標があったよな」

 「毎日僕は、実験をしてデータを取っています。答えがないところに、答えを出していく。すごくワクワクします。が、正直言って不安もあります。“これ、うまくいくのかな?”って。特に、最終仕様をどちらにしたらいいのか。今日、本社に出張している田所さんも、きっと迷っているはずです。矢野さんは、どう思われますか」

 「俺か、俺は、そうだなあ……」

 季節は冬。プロジェクトは、10人ほどの小さな所帯だった。季節が移ろい夏になったとき、この小所帯が全社横断の戦略プロジェクトに発展することになるとは、リーダーもメンバーも、さらには関係者さえ、この時点では誰も知り得なかった。
 

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