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温暖化国際交渉、COP16の意義
コラム
山根一眞の『The環業革命』
ホントの大量排出国はどこか?
GOSATには、温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS)と雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)という2種の観測機器が搭載されている。大気中の二酸化炭素濃度の観測では、実に最大で1ppm(100万分の1)という超高精度を目指す。二酸化炭素の1年間の濃度変化は4ppmであるため、これだけの精度がないと二酸化炭素の挙動がわからないからだ。もっとも大気中には、雲、煤煙や黄砂、塩を含んだ海水のしぶき、火山による二酸化硫黄など大気中の微粒子、エアロソルが含まれており、その影響が避けられない。そこでGOSATは、同時にエアロソルの観測も行い、温室効果ガス観測センサの補正を行う仕掛けになっている。
しかし、それだけでは不十分。そこで、各国のセンサの技術開発エンジニアたちや地上で温室効果ガスの観測を行っている研究者たちの協力で、地上での観測データと衛星のデータを突き合わせる校正と検証を進めようというのである。協力者にはGOSATのデータを無償提供するという「ギブ&テイク」によって、運用経費の低コスト化もはかれるのである(それが一番の狙いのようだが)。
ところで、人間の活動で排出された二酸化炭素のうち20%は行方がわかっていないという。森林が吸収しているのか、海洋に溶けているのか…。そこで GOSATは、単に5万6000地点の濃度データを観測するだけでなく、亜大陸規模、あるいは国別の二酸化炭素の増減や収支を知ることを目指している。そのためには、観測データをスーパーコンピュータで解析する必要がある。大気の動きを解析するモデルは7つが有名だそうだが、この分野でIPCC(政府間気候パネル)に大きな貢献をしてきたのが、ロンドン郊外にある英国気象局ハドレーセンターだ。GOSATの観測データはこのハドレーセンターからも利用したいという希望を受けている。
二酸化炭素は気体であるために、たとえば中国から日本に流入している量が増えていることは十分に想像できる。排出源や吸収源だけでなく、その移動量がわからなければ、国別の正確な排出量もつかめない。スーパーコンピュータによる解析では、そういう二酸化炭素の移動や量も明かにされるだろう。温室効果ガスの大量排出国にとっては、いい訳のできない証拠をつきつけられることになる。 GOSATミッションは、温室効果ガスの緻密で継続的な観測を日本が行うという点で、きわめて大きな世界貢献を果たす。2008年の北海道洞爺湖サミットでは、議長国日本は温暖化対策で何らかのイニシアチブを示さねばならないが、GOSATがその目玉の一つとなることは間違いない。プロジェクト開始から運用終了まで10年以上にも及ぶこの壮大なミッションには、拍手喝采だ。



ノンフィクション作家
1947年10月12日、東京都中野区生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。著書に、最新刊『メタルカラー烈伝温暖化クライシス』など『メタルカラーの時代』シリーズの単行本と文庫本(小学館)は合計19冊を数える。『環業革命』(講談社)は10年にわたる取材成果をまとめた。その他、『アマゾン入門』、『東京のそうじ』、『モバイル書斎の遊戯術』、『デジタル産業革命』、『山根一眞の素朴な疑問』など。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、同宇宙科学研究本部客員教授、中央教育審議会専門委員(文部科学省)、生物多様性戦略検討会委員(農林水産省)、日本生態系協会理事、青森県アドバイザー、北九州マイスター選考委員、日本経済新聞社「ものづくり大賞」選考委員、NTTドコモアドバイザリーボード(社外取締役)、講談社出版文化賞科学出版賞審査委員。日本エコツーリズム協会、国際技能工芸機構、共用品推進機構、インターネット協会、日本聴導犬協会、大宅壮一文庫などの各評議員。2001年北九州博覧祭北九州市出展「ものづくりメタルカラー館」プロデューサー、2005年日本国際博覧会・愛知県総合プロデューサー、国民文化祭ふくい2005・総合プロデューサーなどを歴任。日本文藝家協会会員。
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