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温暖化国際交渉、COP16の意義
コラム
山口光恒の『地球温暖化 日本の戦略』
高い限界削減費用に一定の理解
欧米で評価された麻生中期目標
次に、米国の反応はどうか。EUと同様の説明をしたが、米国では2005年比15%削減で限界費用が$150と言うと、一様にとんでもない数字だと驚く。今年6月にワックスマン・マーキー法案が下院を通過しているが、この法案では米国としての全体の削減量は2005年比マイナス20%とされている。
ただし、この数字はAspirational(願望)であるとする意見が支配的であり、法的拘束力があるのはキャップ・アンド・トレードの対象部門についての2005年比17%減だけである。しかもこの法案には、国内外でのオフセット(プロジェクトごとあるいはセクターごとの排出削減に応じたクレジットの入手・購入)がそれぞれ10億tずつ認められ、安いと見られる国外オフセットは最高15億tまで利用可能である(この場合、国内は5億t)。
この法案に対しては、連邦議会予算局(CBO)、環境保護局(EPA)、エネルギー省(の一部門であるEIA)がそれぞれ独自の立場から分析をしているが、2020年時点の限界削減費用は$16〜$32程度である(CBOが$26、EPAコアシナリオが$16、EIAベースケースが$32。なお、CBOは2019年)。もちろん海外オフセットの利用状況などによりかなりばらつきがあり、これらを勘案すると$16〜$93となる。このうち$93は、海外オフセットゼロ、かつ原子力やCO2の回収・貯留(CCS)などにつき特段の進歩がないというケースで日本の想定より厳しい前提であり、それでも日本の$150には及ばない。
米国議会が海外オフセットゼロの法案を通すはずはなく、今後、上院で審議される法案は、仮に通過する場合でも排出権価格上限(一定の価格に達した場合、政府が当該価格で市場に排出権を放出するといういわゆるセーフティバルブ条項)付きと見られているなかで、どの角度から見ても日本の削減コストの高さが際立っている。
これに関して印象に残ったのはRFF(Resources for the Future)のレイモンド・コップ氏との会話である。筆者が米国として温暖化対策をどこまで進めるべきか(温暖化対策の究極目標)について、早急に議論すべきであると迫ったのに対し、同氏から「2℃目標」や「2050年世界排出量半減目標」に結び付くかどうかとは無関係に、米国として許容できる対策は限界削減費用が$50までであるとの反応が返ってきたことである。このあたりが、おそらく米国としてのコンセンサスなのではなかろうか。
以上、日本の中期目標に対するEUと米国の反応について述べてきた。日本の限界削減費用の高さの認識と並んで欧米に共通しているのは、なぜそんなに高いコストをかけて国内で削減するのかという点である。例えば15%減を目標にしても、海外オフセットの活用により、なぜ限界削減費用を欧米と同程度の$50くらいに抑える政策を取らないのかということである。
山口光恒 氏 (やまぐち みつつね)
東京大学先端科学技術研究センター 特任教授 放送大学客員教授
1939年神奈川県生まれ。1962年慶應義塾大学経済学部卒業。同年東京海上火災保険入社、1999年3月退社(役員待遇理事)。1996年から慶應義塾大学経済学部教授、帝京大学経済学部教授を経て、現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、放送大学大学院客員教授。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会リードオーサー、OECD貿易と環境合同専門家会議日本政府代表(外務省)、産業構造審議会地球環境小委員会委員(経済産業省)、総合資源エネルギー調査会基本問題小委員会委員(経済産業省)など多数の委員を務める。
主な著書は『現代のリスクと保険』(岩波書店)、『地球環境問題と企業』(岩波書店)、『環境マネジメント改訂版』(放送大学教育振興会)、『持続可能性の経済学』(共著・慶応大学出版会)など。
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松本龍・環境大臣(11/02/10) NEW | ![]() |
環境省 地球環境審議官 南川秀樹氏(10/09/16) |
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経済産業省 大臣官房審議官 有馬純氏(10/08/16) |
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ピュー気候変動センター 国際戦略部長 エリオット・ディリンジャー氏(10/03/25) |
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経済産業副大臣 増子輝彦氏(10/01/25) |
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ブレークスルー研究所 マイケル・シェレンバーガー所長 テッド・ノードハウス会長(09/12/21) |


高い限界削減費用に一定の理解
欧米で評価された麻生中期目標
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