異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

山口光恒の『地球温暖化 日本の戦略』

洞爺湖サミットの評価[後編]

国際交渉の合意に向けて
日本は究極目標の提案を

2008年8月18日(月)公開
「途上国の義務」の議論で不足する科学的知見

 2008年7月9日、3日間の日程を終え閉幕した北海道・洞爺湖サミット(主要国首脳会議)。世界には温暖化以外にも早急に解決しなければならない問題が数多くあり、その問題解決のためには、有限な資源の最適な配分が重要であるという認識がサミットの議論の根底にあったことを前編で説明した。そのうえで、温暖化問題に焦点を絞り、G8(主要8カ国)の声明から、2050年の半減目標などの意味を読み解いた。今回の後編では、「途上国の義務」から分析を始める。

 途上国の義務に関してG8の声明では、「我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力の原則に沿って、先進主要経済国が行うことと途上主要経済国が行うことは異なることを認識する」と明言している。この意味は極めて重要である。つまり米国は、主要排出国すべてが参加しない枠組みは拒否をするとの原則を一切曲げていないが、この文言に同意しているということは、途上国の義務は先進国よりも緩くてもよいということである。問題は、絶対排出量のキャップが途上国のほうが緩くてもよいのか、あるいは途上国は国別総量目標ではなく例えば効率目標でもよいのか、このあたりが不明瞭なことである。

 他方、声明には、2009年末までに交渉される国際合意において、「すべての主要経済国が意味ある緩和の行動を(拘束されるかたちで)コミットすることが必要である」との文言もある。これを合わせると、主要途上国は先進国と比べると義務の強弱に差はあっても、「ポスト京都」の枠組みでは、法的拘束力のあるかたちで義務を負うことが求められている。

 ところで、「共通だが差異のある責任」とは具体的に何か。一般的には、過去の温室効果ガス排出量は先進国が圧倒的に多いので、先進国がそれに応じた責任(削減義務)を負うべきであると理解され、京都議定書もこの原則にのっとり、先進国のみが削減義務を負っている。本当にそうか。確かに、エネルギー起源による二酸化炭素(CO2)の排出量で見るかぎり、産業革命を先に実行した先進国の排出量が大きい。しかし、メタンや土地利用などによる温室効果ガスまで対象を拡大すると必ずしもそうではない。

 昨年12月、バリ島における国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)で発表された「MATCHプロジェクト(Modeling and assessment of contributions to climate change, Final Report)」にいくつか興味深いデータが紹介された。これは過去105年間の国ごとの温暖化への影響度を、日本の財団法人エネルギー総合工学研究所(IAE)のモデルを含む世界の5つのモデルで比較したものである。「BCC-SCM」は中国、「CICERO」はノルウェー、「Ecofys」はドイツ、「UKMO」は英国のモデルである。
 

■途上国に起因する温室効果ガス排出は先進国に匹敵

途上国に起因する温室効果ガス増は先進国に匹敵

先進国や途上国が排出する二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)の2005年の気温上昇への寄与度を土地利用変化も含めて分析すると、上位には先進国と途上国が混在し、どちらの影響が大きいか明確な線引きをすることは難しい。なお、棒グラフ上方の細い線は不確実性の範囲を示す(出典:MATCH「Final report - Bari, Indonesia 5 December 2007」)
 

 対象は、土地利用変化に起因するものを含むCO2、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)であるが、グラフから明らかな通り、1位は米国だが、2番手は中国。ブラジルやインドも先進国に匹敵するか、それ以上の影響を与えている。しかも、5つのモデルによる差はわずかである。ここでは省略するが、2050年までの将来の排出量も勘案すると、1位が中国、2位が米国、3位はインドとなり、ますます途上国による排出の割合が高まる。

 これまで、途上国が「共通だが差異のある責任」と言った途端に、まるで水戸黄門のご印籠のように先進国は沈黙を余儀なくされる風があったが、この問題は、上記のグラフのような科学的知見に基づいた冷静な議論が必要である。
 

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