異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

山口光恒の『地球温暖化 日本の戦略』

洞爺湖サミットの評価[後編]

国際交渉の合意に向けて
日本は究極目標の提案を

福田ビジョンから日本案の確立に向けて

 ここまで、サミットについて振り返ってきたが、同様の視点から、サミットに臨むに際して福田首相が提示した福田ビジョンについて一言だけ述べておきたい。福田ビジョンは、技術の重要性に多くのスペースを割き、国別総量目標の設定にセクトラルアプローチの必要性を説くなど、評価すべき点が多々ある。しかし、根本的なところで欠けている点がある。

 第一は、温暖化対策の究極目標に関して何も触れていないことだ。そして第二は、これと対をなすものだが、首相が今年1月の世界経済フォーラムの年次総会(通称・ダボス会議)で述べた2050年半減の理由が示されていない点である。福田首相はダボス会議で、「破局を避けるためにはそうすべきだとIPCCが警告を発している」と言っているが、実はIPCCはそのような警告は発しておらず、これは理由とは呼べない。第三は、それに向けて、日本が現状比60〜80%削減をめざすとするが、その具体的内容やコストは何も示されていない。

 最後の削減の具体策やコストについては、独立行政法人国立環境研究所がバックキャスティングの手法で1990年比70%削減に必要な条件を提示しており、内容は極めて示唆に富んだものである。しかし、これはエネルギー多消費産業の海外移転を伴い、さらに日本が削減を成し遂げても、それが直接世界レベルでの削減につながらないという面を有している。また専門家の意見では、80%削減はほぼ不可能とのことである。

 この三つのポイントのうち、最大の問題は、究極目標に関する日本案の欠如である。本来は、これがすべての温暖化対策の出発点であり、究極目標なしに、2050年半減について、国民及び世界の指導者に対して説得力ある説明は不可能である。今からでも遅くはない。何としても、この点に関する日本としての目標を定めるべきである。

 最後に、半減目標に関し、学界の動向の一部を紹介しておく。洞爺湖サミットの2週間前となる6月23日と24日の両日、日本学術会議(「地球温暖化等、人間活動に起因する地球環境問題に関する検討委員会」)は、東京大学や北海道大学、独立行政法人海洋研究開発機構と合同で、地球温暖化などの地球環境問題を議論する「国際環境専門者会議」を札幌市で開催した。会議の結果は議長サマリーとして公表されたが、そこには次のような文言がある。

 「気候変動枠組条約に規定されている究極目標を達成するためには、長期的に大幅な排出削減を行わなくてはならず、最終的には50%を大幅に上回る削減が必要である。G8サミット等において2050年までに温室効果ガスを50%削減する目標が提起されているが、このような大幅な削減を実現するには、技術的にも社会経済的にも多くの難しい課題がある。長期的対策の適切な目標設定を含め、このような課題の解決のために世界の英知を結集する必要がある」

 ここでは、最終的には50%を大幅に上回る削減の必要性を指摘する一方で、2050年半減は極めて困難と認識されている。もう一つ重要な点は、「適切な」究極目標の設定の必要性も提起されていることだ。首相をはじめ日本政府の政策決定当事者に、是非、一考いただけることを願っている。
 

山口光恒 氏山口光恒 氏 (やまぐち みつつね)
東京大学先端科学技術研究センター 特任教授 放送大学客員教授

1939年神奈川県生まれ。1962年慶應義塾大学経済学部卒業。同年東京海上火災保険入社、1999年3月退社(役員待遇理事)。1996年から慶應義塾大学経済学部教授、帝京大学経済学部教授を経て、現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、放送大学大学院客員教授。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会リードオーサー、OECD貿易と環境合同専門家会議日本政府代表(外務省)、産業構造審議会地球環境小委員会委員(経済産業省)、総合資源エネルギー調査会基本問題小委員会委員(経済産業省)など多数の委員を務める。

主な著書は『現代のリスクと保険』(岩波書店)、『地球環境問題と企業』(岩波書店)、『環境マネジメント改訂版』(放送大学教育振興会)、『持続可能性の経済学』(共著・慶応大学出版会)など。

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