異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

山口光恒の『地球温暖化 日本の戦略』

排出権取引制度の光と影[前編]

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 「産業部門にCap & Tradeを導入せよ」という論者の主張を聞いて、一度尋ねてみたいと思っているのは、その理由である。筆者の見るところ、その理由は効率性と環境効果である。この2点について検討してみよう。

1)効率性追求と産業部門のCap & Trade
 まず効率性であるが、産業部門の国内対策は経団連の温暖化自主行動計画が中核となっている。直接規制に対するCap & Tradeの利点は、取引により、すべての主体の限界削減費用が均等化することで、社会全体として“最小費用”で所与の目標が達成できるというものだ。環境経済学の教科書を読む限りその通りである。それが本当かどうかは後で検討するとして、仮に効率性の観点からCap & Tradeを主張するのだとしたら、なぜほかのもっと大きい非効率性を取り上げないのかというのが、日ごろから抱いている疑問である。

 このコラムで、いずれ取り上げるつもりだが、日本の京都議定書目標達成計画は1998年の地球温暖化防止対策推進大綱(第1次大綱)以来、2度にわたって改定されたが、その大枠は一度も変わっていない。
 

■第一約束期間までの時間が短くなる中で、目標達成計画の基本構想は変わっていない

 
達成計画
2005年
第2次大綱
2002年
第1次大綱
1998年
エネルギー起源CO2
0.60%
±0.0%
±0.0%
吸収源
−3.90%
−3.90%
−3.70%
京都メカニズム
−1.60%
−1.60%
−1.80%
その他
−1.10%
−0.50%
−0.50%
合計
−6.00%
−6.00%
−6.00%

 
温暖化推進対策推進大綱の比較。1998年の第1次大綱以来、2度改訂されているが、大枠は変わらない。産業部門において効率性ばかりを追求しているが、正しい主張かどうか疑問が残る
 

 排出権取引論者が問題にしている産業部門の対策とは、上記のうちエネルギー起源CO2対策の一部である。この対策の中には経団連の自主行動計画をはじめ、運輸、業務、家庭、それに産業の全部門を対象とした省エネ法強化(自動車の燃費や家電のトップランナー・アプローチなど)、さらには建物のエネルギー効率向上など多様な手段が含まれている。効率性を主張するのであれば、こうした対策ごとの1t当たり削減費用を比べ、安い対策から導入するというのが筋である。筆者は温暖化に関するいくつかの審議会に出席しているが、こうした発言はあまり聞いたことがない。

 もちろん、実際には対策ごとのコスト比較が難しいことは承知している。実際、ここ2年ばかり、経済産業省肝いりの研究会で専門家が入手可能なデータを基に研究をしているが、一筋縄ではいかない。しかしEUの温暖化政策であるECCP (European Climate Change Programme)では、セクター別に1t当たりの削減コストと削減可能量が明示されている。筆者はこの実例を審議会で配布してもらい、日本の政策にコストの観点を入れる(即ち効率性を勘案する)よう主張したが、筆者の知る限り排出権取引論者からこうした問題提起は無かった。
 

■EUの戦略には、費用対効果の分析の裏づけがある(単位:100万t)

削減費用
(ユーロ/tCO2
<0
0-20
20-50
50-100
100-200
>200
熱電併給
 
1
17
47
 
 
熱量転換
 
88
25
 
 
 
効率改善
 
 
100
 
 
 
再生可能エネルギー
25
101
18
20
2
34
メタン排出削減
20
14
 
 
 
 
炭素隔離削減
 
 
50
 
 
 
その他の温室効果ガス
(SF6 N2O)
 
3
 
 
 
 
合計
45
207
210
67
2
34

 
EUは温暖化対策の費用対効果を分析、CO2換算で1t当たり20ユーロ以下のコストで2億5200万t削減できると判断した(出典:European Climate Change Programme, Report-June 2001)
 

 議定書の目標達成計画のもう一つの問題は吸収源である。これは植林、森林保全などによりCO2を吸収する対策である。2007年4月に開かれた産業構造審議会と中央環境審議会の合同審議会に提出された資料によると、CO2の削減コストは1t当たり約3万円であり、京都メカニズムに比べると明らかに高い対策である。もちろん森林保全等には景観保全や雇用などCO2吸収以外の様々な附随便益があるので一概に比較はできない。しかし、こうした点を考慮したとしてもこの対策が非効率であることは否めない(既述の通りEU ETS第2フェーズの価格は1t当たり約3000円、クリーン開発メカニズムのクレジットは、さらに安い)。

 産業部門対策のコストを少しでも下げるために排出権取引を主張するのであれば、それと並んでなぜ達成計画そのものの非効率性の是正を図らないのか、これが第1の疑問である。この疑問に応えずに産業部門のみのCap & Trade導入を主張する場合、その理由は単に世界の潮流だからという以外にはないことになる。
 

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