異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

植田和弘の『地球温暖化防止の環境経済学』

グローバル・イシュー解決のために

ジェフリー・サックスが示した
協力原理の国際社会

競争原理から協力原理の国際社会へ

 以上のようなサックスの議論を踏まえると、「競争原理にもとづく世界」を「協力原理にもとづく世界」に転換していかなければならないと思えてくる。事実、本書の最終章のタイトルは「力を合わせて」となっている。

 既にサックスの言を紹介したように、「自由放任主義の市場原理や、競争にあけくれる国民国家のなかで、こうした問題がおのずと解決されることはない」というのがサックスのスタンスである。市場原理も競争原理に基づいているので、国家も競争原理に基づくことになると、どうすれば力を合わせることができるのか。もちろんサックスは市場原理を否定しているのではない。むしろ、低炭素技術開発を促進する市場のインセンティブを重視している。市場の力だけでは解決できない問題も少なくないことも忘れてはならない、というのである。グローバル・イシューの多くはそうした問題である。

 グローバル・イシューの解決には市場も活用するけれども、やはり新しいガバナンスの形が必要である。サックスは、企業、学術機関、NGO(非政府組織)、専門組織など、すべてはグローバル化によって強制的に、あるいはそれを契機に再編成されつつあるが、国連や政府の刷新も含めて、これらがグローバル・ゴールの達成に向けて力を合わせなければならない、としている。「力を合わせる」こと、ここにグローバル・イシューを解決する鍵があるとサックスは考える。では、人々が力を合わせる基盤はどこにあるのか。

 サックスは、同じくノーベル経済学賞受賞者であるアマルティア・センのアイデンティティー論を引用して、多面的なアイデンティティーのおかげで、私たちは世界中の重層的な側面と結び付くことができ、一人ひとりが、グローバルなネットワークをつなぐ要素になれることに着目する。私たちの誰もが、国際社会を構成する一員であり、そうなって初めて、世界のグローバルな課題を理解し、取り組むことができる、と期待する。

 これは、協力原理に基づく国際社会を構想しながら、国際社会を構成する一人ひとりが行動する時代の到来、というべきであろう。
 

植田和弘 氏植田 和弘 氏 (うえた かずひろ)
京都大学大学院経済学研究科教授

1952年、香川県生まれ。1997年、京都大学大学院経済学研究科教授。2002年、京都大学地球環境大学院教授を兼任。専攻は、環境経済学・財政学。学会賞の受賞歴に、1992年、国際公共経済学会賞受賞。1993年、公益事業学会奨励賞受賞。1997年、廃棄物学会著作賞受賞。2006年、環境科学会学術賞受賞。著書に、『環境と経済を考える』(岩波書店)、『環境経済学への招待』(丸善ライブラリー)ほか多数。

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この記事の目次
グローバル・イシュー解決のために
ジェフリー・サックスが示した
協力原理の国際社会

国際交渉 サミット

国際協力 途上国支援

温暖化の影響 生態系