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温暖化国際交渉、COP16の意義
コラム
鳥井弘之の『ニュースの深層』
バイオガソリンは
地球温暖化防止の救世主か?
人間が食べるべき食料で車を走らせることに違和感を持つ人がいるかもしれない。農業の生産性向上は人口の増加を上回っていたため、現在の食料生産が確保できれば、世界の60億人を超す人々が飢えることはないといわれる。全体としてみればその通りかもしれないが、配分に大きな問題があり、5億人から10億人が飢餓に苦しんでいる。牛肉1tを生産するには穀物が10t必要だといわれる。肉食の人は、穀物だけを食べる人に比べ、10倍の穀物を消費している計算になる。飢餓に悩まされる人々にとってみれば、肉食の習慣すら許し難いことかもしれない。穀物からバイオガソリンを生産するとなると、飢餓に苦しむ人の目にどう映るのであろうか。
もし、廃木材や間伐材、稲ワラやもみ殻などを原料にエタノールを生産できれば途上国の反発を防ぐことができる。もちろん、エネルギー生産と食料生産の因果関係も複雑にならずに済む。未利用廃棄物の有効利用にもつながる。本来、木材は重要なバイオマス資源と考えられるが、今のところは燃焼させて発電するぐらいしか方法がない。リグニン、セルロース、ヘミセルロースなどが複雑に絡まった固体からできており、これを分解しておかなければ発酵させることは難しい。そして、その前処理技術が確立されていないので、木質からのエタノール生産は行われていない。
日本では、白色腐朽菌と呼ばれるキノコがリグニンだけを選択的に分解することに着目し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が木質などの前処理を実用化するプロジェクトを進めており、3〜5年以内に実用化が期待できるという。この技術が実用化すればバイオガソリンも新しい局面を迎える可能性がある。
原理的なところだけを考えれば、バイオマスの利用はCO2の発生量を減らす効果がある。しかし、現実にはどうだろう。エタノールの生産から運搬、消費に至るまでに使うエネルギーと、エタノールから得られるエネルギーを比べ、後者が十分に大きくなければ、温暖化を防止したことにはならない。
4月30日の日本経済新聞朝刊はこの点に関する電力中央研究所の試算結果を紹介している。これによると、サトウキビから作るブラジル産のエタノールを日本に輸入して使った場合でも、石油を燃やすより大幅にCO2を減らすことができるという。
ただし、エタノールを作る原料によってこの値は違ってくる。トウモロコシ原料の場合には、製造工程が複雑でエネルギーを大量に消費するため、最終的にCO2排出量の増加につながる心配もある。廃木材や間伐材からエタノールを作る場合も、前処理でエネルギーを消費すれば逆効果になる心配も大きい。その点、白色腐朽菌の利用には大いに期待したいところである。
鳥井 弘之 氏 (とりい ひろゆき)
東京工業大学教授
1942年東京都生まれ。1969年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。1969年日本経済新聞社入社、1987年より論説委員を務め、2002年日本経済新聞社退社。2002年より東京工業大学原子炉工学研究所教授、東京大学先端科学技術研究センター客員教授を兼務。また、科学技術・学術審議会臨時委員などを務める。
主な著書に『原子力の未来―持続可能な発展への構想』(日本経済新聞社)、『科学技術文明再生論─社会との共進化関係を取り戻せ』(日本経済新聞社)、『どう見る、どう考える、放射性廃棄物』(エネルギーフォーラム)、共著に『「原発ごみ」はどこへ』(エネルギーフォーラム)などがある。
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