異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

ブータンに学び始めた国も
先進国で広がるGNHの思想

GDPは経済指標として妥当か

 この調査に当たったデービッド・マイヤーズ教授( Hope College, Michigan)は、「自分は大丈夫と感じることができるお金を持てば、人々はそれ以上の富(お金)が幸福感をもたらしてくれる度合いは低くなると感じている」と述べている。一定以上のお金は、人々の幸福感増大には役立たないということだ。「お金が必ずしも幸福をもたらすものではない」ことは、昔から言われている。世界各地の民話の中にもそれを題材にしたものが一杯ある。しかし今は先進国も途上国も「GDP至上主義」の虜(とりこ)になっている。他に経済的成功を図る、そして皆が共有できる指標がないからだ。そいう意味では、フランスのサルコジ大統領の「何か新しい指標でフランス経済の姿を示したい」という考え方はある意味当然であると思えるし、それは価値あるトライのように思える。

 「自分は大丈夫と感じることができるモノやお金を持てば、人々はそれ以上の富(お金)に幸福感を持つ度合いは低くなる」という長い時間をかけた米国での調査が正しいと仮定すれば、以下のような仮定が可能である。

 「GDPという今は代表的な経済指標は、まだモノもそろっていない貧しい途上国の経済成長を図るには有効だが、一定の経済レベルに達している先進国では国の経済の健全度を図る指標としては相応しくない」

 多くの先進国でかなりの国民は、お金は別にして既に「これ以上モノを持っても」というレベルに達していると考えることができるからだ。この感覚が今の先進国全体で見られる「消費不況」の背景でもある。むろん、先進国でも貧困はまん延しているという見方もできるし、「お金はいくらあっても困らない」と考えている人は多いだろう。「ではどこが達成水準か」「“もう十分”のレベルはどこか」という難しい問題は残る。

 もし日本や米国、それに欧州がGDPに代わるGNH的な経済指標を採用することになったら、世界の経済政策は大きく変わる。途上国は引き続きGDP重視の政策を続けるから、そこでは齟齬(そご)が生まれることになるが、少なくとも世界のGDPの半分以上を占める国が、今までとはガラリと変わった経済政策を取ることになる。

 もっとも筆者もこう書きながら、それが容易でないことは十分感じている。「幸福」とか「福祉」という指標は枝葉の多い概念であって、割り切りが難しい。しかも人によって大きく違う。国によっても違う。それを指標化することは至難の業だ。かつ、ドイツやスウェーデンにある「緑の党」のような党を除けば、政党や政治家はなかなかこのアイデアには飛びつきにくい。

 しかし、リーマンショック後の景気後退の深刻化、加えて環境制約の増大などで先進国が「新しい経済政策」を必要としていることは明らかである。だから「ブータンの試み」を鼻で笑っている人でも、よく考えると自分の心の中に「GDP一辺倒では問題は解決しない」という気持ちがあるはずだ。そういう意味では、サルコジの試みは有益だし、それは他の国にも今後広がると見ることができる。

 次回は、「ではブータンって一体どういう国」を私が見たままに報告する。
 

伊藤洋一 氏伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)

1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/

幻 冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の 秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。

現 在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレ ビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの 「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。

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この記事の目次
ブータンに学び始めた国も
先進国で広がるGNHの思想

エネルギー政策 米国/欧州/BRICs