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国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が閉幕した。地球温暖化問題における2013年以降の世界の方向を決める重要な会議であり、大排出国・米中の動向や途上国に対する支援システム構築など、注目すべき点は多かった。今回の交渉結果をどのように読み、今後日本はどの方向に進むべきかを提言する。

コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

幸福を9要素に分解して検討中
GNHは政情安定化にも寄与

2009年10月8日(木)公開
21歳でGNHを訴えた第4代国王

 ブータンでなぜ「GNH(国民総幸福量)というアイデア」が生まれるに至ったかについて、筆者は前回のコラムでこの国を取り巻く特殊環境として三つを挙げた。

  1. 激しい大陸移動の跡が残した皺(山また山)の中に存在するという厳しい自然環境(しばしば超えがたい環境の制約)
  2. 「輪廻転生」を信じ、「金銭や物質的なものに対する欲望の抑制」を説く仏教が日本よりはるかに重みを持つ信心深い国民の国であること(来世の自分も大切にする考え方)
  3. そして近くにありながら「ああなりたくない」とブータンの人々が考えたネパールの存在(反面教師)

 しかし「GNHというアイデア」が生まれるには、これと同等か、もっと重要かもしれない存在がある。それは現国王の父親に当たる第4代の「ジグミ・シンゲ・ワンチュク国王」だ。第5代の現国王も2008年7月に初の成文憲法典を公布し、名実ともにブータンを立憲君主国へと移行させるなど、非常に国民に人気が高い。しかし、1972年に16歳で即位し、国の近代化と民主化に向けた粘り強い取り組みを行ったのは第4代の「ジグミ・シンゲ・ワンチュク国王」である。ブータンに行くと、今はこの第4代と現在の第5代の国王が仲良く写っている写真がどこに行っても飾ってある。

 「GNH」という言葉を初めて国際舞台の場で使ったのも、この第4代の国王だったと言われる。それは76年の第5回非同盟諸国会議のおりで、当時21才にすぎなかった同国王は「GNHはGDP(国内総生産)よりも大切である」と語ったと言われている。世界中の国が成長を急いでいたときにこの発言に注目した向きも少なかったし、当時通信社の記者をしていた筆者も全くその種のニュースを扱った記憶がない。

 今回いろいろな資料に当たったが、どうやら60年代から70年代初めにかけて、ブータンが「国の形」を相当模索していたことがわかった。世界中が成長に沸き立っていた頃だが、第一の石油ショックもあった。73年だ。その中で「経済発展は社会の二極化(貧富の差の拡大)、環境破壊、固有の文化の喪失などにつながり、国民が必ずしも幸福になるとは限らない」という結論に達したという。ブータンは先進国や近隣の国を見たのだろう。こうした考え方を固める過程では 第54回 で取り上げた「ポブジカの実験」、そこでの「民意の汲み上げ」の中で示された多くの国民(多くの場合は農民や放牧民)の気持ちもあっただろうし、国王の「近隣の諸国、特にネパールとは違う国作り」の意志もあっただろう。この意志決定が一朝一夕に出来たとは思わない。国民感情と国王の意志の長いすり合わせの時期が必要だったはずだ。
 

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