異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

幸福を9要素に分解して検討中
GNHは政情安定化にも寄与

急いでの成長を拒否するブータン

 しかし断っておくが、ブータン全体が成長を欲していないかというとそんなことはない。パロでもティンプーでも街は急速に都市化していて、伝統的なブータンの家ではなく日本や欧州にあるようなマンションも増えている。そこでは便所(ない場合もある)も風呂(私たちが見たのは熱した石を入れる石風呂)も屋外というブータンではかつて普通だった生活は昔のもので、「より良い生活をしたい」という若者は増えている。彼らは金曜日の夜には羽目を外して騒ぐこともする。

 滞在中に読んだ現地の英字紙には、「ブータンの新しい成長の糧」として、政府が鉱物資源に目を付けているとの記事があった。ブータンの今の輸出品は、インド向け電力と農産物くらい。援助はたくさん来るが、それで国を一段上に豊かにすることはできない。まだ未調査の場所がブータンにはいっぱいある。なにせブータンではインフラが決定的に欠落している。ホテルでもお湯を出すと黄色い。錆(さび)や泥が入っている。だから、そんな状態からは脱出したいし、そのために成長が必要だ。

 しかし、成長は、「人の幸福を大事にしたものでなければならない」とブータンの人々は考え、それを実践しようとしている。何よりも人々が、「自分は幸せだ」と感じるのは、「社会全体として格差がないことだ」とブータンの人々は言う。私の質問に例外なくそう答えた。むろん金持ち、貧乏人はいるが、「目立つほど差がない」(現地のツアーガイド、ジュルミさん)というところが非常に重要だと。

 それは正しい考え方かもしれない。ブータンの近隣ではタイにしろ中国にしろ、成長を急いで格差を作った国ほど国内騒乱が大きい。ブータンの人々が総じて幸せそうに見えるのはそういう背景、つまり「格差が小さい」という事実がありそうだ。ブータンは成長そのものを拒否していない。しかし急いでの成長は拒否している。隣国であるネパールは格差ゆえに政情は不安定だ。ネパールでは政府高官が賄賂(わいろ)を取るのは普通だといわれ、だから民衆が騒ぐ。ブータンのトップは国王で、国王はネパールを反面教師にしながらブータンの政情安定化のためにも「GNHという哲学」を堅持しているといえる。
 

伊藤洋一 氏伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)

1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/

幻 冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の 秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。

現 在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレ ビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの 「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。

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