


COP15、温暖化交渉を読む
コラム
伊藤洋一の『BRICsの衝撃』
GNHがブータンで生まれた背景
気候風土、隣国の存在、そして宗教
ブータンに入るとまず驚くのは「旗」である。あらゆるところにある。家の上には必ず一旗あるし、家の周りにも実に数多くの旗がたなびいている。戦国時代(日本)の戦旗のような形をしている。よく見るとそれらは5色である。長く使っていて変色して白っぽくなっているものも多いが、基本は5つの色からなる。それぞれの色には象徴するものがある。
白=風
緑=自然(木)
赤=火
青=水
黄色=土
甲州(山梨県)は武田氏の「風林火山」を一瞬思い出したが、要するに5つの色はすべて自然を指す。そのくらい自然が強烈な国なのだ。九州ほどの大きさに65万人(それとて、はっきりしないらしい)が住むといえば余裕がありそうだが、逆に言えば「それしか住めないほど自然が強烈な、人間の生活を制約している国」ということだ。行っても行っても次々に現れる急峻な山とそれをおおう緑。深い谷の底を流れる川。その川に削られた崖。川に沿ってわずかに土地が開けると、人々は田を耕し、小さな街を形作り、やっとこさ空港も建設した。
ちょっと違和感のある表現かもしれないが、ブータンを移動しながら、「あ、今自分は地球の皺(しわ)の中を移動している」と何回も思った。何億年前だかしらないが、インド亜大陸が北上してユーラシア大陸にぶつかった。そして更に上に(北に)押した。その時できた皺の一番高いところがヒマラヤであり、その最高峰がチョモランマだ。ブータンはヒマラヤのすぐ南にある。だからパロという唯一の空港に降り立つと、既に標高は2400mである。ブータンには広い平野も広い高台もない。地球の皺が続く。つまり山また山だ。山は緑に蔽われている。
日本もある意味で「山の国」だが、同時に「四方を海に囲まれた国」でもある。対してブータンは内陸の「極限的山の国」だと言ってよい。道など造れそうもないのに崖のような所に狭い道を延々と造った。インド人が工事に当たったケースが多いそうだが(だからガタガタだとブータンの人は言う)、時速は出しても40km。一歩間違えば谷底に真っ逆さまが確実な左右に首を振るジェットコースターに乗っているのと同じだ。昔の移動はもっと大変だったはずだ。


気候風土、隣国の存在、そして宗教

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