異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

GNHがブータンで生まれた背景
気候風土、隣国の存在、そして宗教

反面教師としての隣国ネパール

 そのチベットを源流とするブータン仏教の基本的考え方の一つが「輪廻転生」だ。インドやその周辺で生まれた宗教であるヒンズー教、仏教の両方に根深くこの考え方がある。要するに「生まれ変わり」の考え方。死んであの世に還った霊魂(魂)が、この世に何度も生まれ変わってくると信じる。今の自分もその生まれ変わりの一部だと。この考え方をする人には、過去の自分がいて、もっと重要なことは「次世代の自分」「その次の自分」がいる。永遠に生まれ変わるわけだから。

 日本人はしばしば、自分を納得させたい時に「人生は一回きりだ」「一度きりだ」と言う。日常会話にもしばしば登場するし、テレビを観ていても何かを楽しむ、トライする前提的な考え方として人々はこれを口にする。しかし「輪廻転生」を信じる人はこんなことは言わない。人生は一回ではない。今の行いが次(将来)の自分を決めると考える。自然と信心深くなる。

 これはインドに何回も行くなかで強く思ったのだが、「輪廻転生」の考え方は、支配者、統治者、支配階級にとって結果的にきわめて便利な考え方だ。今貧しい、身分の低い人間、民衆の一人であっても、祈り、そして今の与えられた仕事を懸命にやれば、「輪廻転生」したときには望む存在(人間であったり、その中でも身分の高い人間)になれると説く。現状に文句を言わずに、今の身分に甘んじ、そして懸命に尽くせという考え方。つまり階級の固定化効果がある。「今」に反抗しないわけだから。ブータンも階級社会だそうだ。

 それは置くとして、ブータンにはもう一つ重要な要素がある。それは稲村さんから聞いた話だ。それは「ブータンにとってはネパールが反面教師」という側面。ブータンにはネパール系の人が多い。そのネパールは、各国から来る援助のほとんどが役人の懐に入ってしまうなど賄賂(わいろ)が横行し、貧富の差は大きく、政情は不安定で内戦もある。「そんな国にしたくない」とブータンでは国王を初めとして多くの人が考えている、というのだ。

 激しい大陸移動の跡が残した皺の間にあるという厳しい自然環境、「輪廻転生」を信じる宗教の国、そして近くにありながら「ああなりたくない」とブータンの人々が考えたネパールの存在。これは筆者の独断だが、こうした環境があったからこそブータンには「GNH(国民総幸福量)の考え方」が生まれたのではないか。

 あと3回ほどブータンの話題にお付き合い願いたい。ブータンは開発途上国としては小さいが、アイデアは大きい。地球が直面している環境問題を考えるヒントを提供している。実は既に有力先進国の一角がブータンのアイデアを取り入れる方針を固めた。それは次の次に触れる。
 

伊藤洋一 氏伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)

1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/

幻 冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の 秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。

現 在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレ ビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの 「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。

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この記事の目次
GNHがブータンで生まれた背景
気候風土、隣国の存在、そして宗教

エネルギー政策 BRICs

エネルギー消費 建築物/交通・運輸/家庭部門