異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

絶対必要な国際的枠組み
──福岡で思ったこと

環境問題を引きずる中国の成長は危ない綱渡り

 中国側は一貫して「明確な証拠がない」と取り合っていない。認めた瞬間にコストの掛かる汚染対策をしなければならないし、場合によっては損害賠償が生ずる。たぶん中国は今後しばらくはこの態度を続けるだろう。日本には、いち早く中国の粉塵などが偏西風に乗って五島列島や北九州や山口を含む地域に飛来し、それが光化学スモッグなどの環境汚染を引き起こしていることを証明して、突き付けてほしいと思った。

 中国からの粉塵などや黄砂に悩んでいるのは日本だけではない。北朝鮮や韓国も同じ事であり、一説には米国やカナダにも飛来しているという説もある。中国の黄砂や粉塵などが原因で米国やカナダで光化学スモッグが発生したとは聞かない。しかし、害のある物質が風に乗って地球を飛び回っていることは明らかなのである。

 黄砂は地球の営みの中で何百年と掛かって環境が形成されたものであり、今の中国で初めて生じた現象ではないと聞く。しかし、中国での乱開発が表土を露出させ、砂漠の面積を拡大させて、それがアジア大陸の強い風に吹き上げられて日本に、さらには米国など北米大陸にも飛んでいっている。

 これを現象として徐々に減らすことはできるはずだ。砂漠の周囲から緑を増やして、水を供給して砂漠の面積を徐々に減少させるのである。難しい仕事かも知れないが、中国がその人口圧力故に食糧生産の引き上げの必要性に迫られることを考慮するならば、長期的には自国にとっても意味のある措置だろう。日本や韓国はそれを支援することができる。

 粉塵はもっと喫緊の問題だ。中国の凄まじい成長の中で、いくつか忘れられていることがある。それは、今の中国の成長は、中国の人民自身にとって将来非常に大きな問題を引き起こすであろう環境問題を引きずりながらのものということだ。汚染して魚もすめなくなった川、重慶に象徴されるような都市の汚れた空気、農薬の野放図な使用、その影響が残る各種の製品。日本はそれを先に経験したから言えるのかもしれないが、危ない綱渡りをしている。

 ある中国の専門家は、「今の中国の体制が崩れるとしたら、環境問題の深刻化が一つの大きなキッカケになるかも知れない」と述べている。筆者もその可能性が十分あると思う。今は中国中が「雇用」を大きな問題としているが、将来的には必ず「環境」が一番の問題になるだろう。なぜなら、命あってこその仕事だからだ。

 今、世界はオバマ米大統領の米国の政策を先頭に、「グリーン・ニューディール」にひた走っている。良いことだ。しかし、身近な問題を一つひとつ解決するのが重要であるという環境問題の大枠からいえば、概念的に新たな景気浮揚策として「グリーン」を看板のようにもってくるのはどうだろうか。

 いずれにせよ、今年はどうだろうか。また北九州や山口、さらには五島列島では光化学スモッグは出るのだろうか。産業活動が低迷しているから今年はないかもしれない。しかし、この問題はむろん「今年なかったからいい」という問題ではない。
 

伊藤洋一 氏伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)

1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/

幻冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。

現在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。

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この記事の目次
絶対必要な国際的枠組み
──福岡で思ったこと

エネルギー政策 BRICs

国際協力 途上国支援

温暖化の影響 生態系/異常気象