異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

インドの意外な素顔
個人で初めて獲った金メダル

貧困を再生産するシステム

 しかし、インドのカースト制度のように社会システムががっちり決まっていて、さらに、スポーツではクリケットくらいしか成功への道が見えないインド社会のような場合には、「あえてチャレンジする誘因」があまりないと言える。多くのインド人から、「インドでは母親が子供に対してスポーツを推奨しない」と聞いた。どこの国でも、母親は自分の子供の将来を考えてアドバイスする。しかし、インドでは、スポーツで成功する道は極めて狭い。だから、母親は子供に勧めない。日本の金メダリストの話を聞いていると、皆、小さいときに、親だったり兄弟姉妹だったりに触発されて競技を始めている。インドにはそれがない。

 カースト制度は、システムとして貧困を再生産している。今はIT(情報技術)分野など脱カーストの職業も増えてきたが、それでもインドの貧困人口は世界でも突出している。あまりの貧困は、子供たちの成長の芽を摘み、人々を自分が生きている社会の環境にも無頓着にさせる。生きているのがやっとになるからだ。インドの場合、環境問題を考えるうえでも、これは重要なのだ。それはインドという社会が、我々が普通に想像するモチベーションや仕組みで動いていないことを示している。

 社会での「誘因の有無」は、社会がその方向に動くかどうかの決定要因である。日本で子供たちがサッカーや野球の選手になりたいのは、富や成功、社会的地位が待っているからである。しかし、今のインドでは、階級や貧困の問題があって、多くの子供はスポーツに目を向ける余裕がない。インドの、特に田舎の人々の環境問題への取り組みの希薄さも、同様の状況から生じている。今後、数回にわたってインドを取り上げるが、社会環境的に言えば、インドがオリンピックでメダルを潤沢に獲れるような状況にならないと、環境問題での大きな進展はないと考えている。

 付記すれば、中国の北京オリンピックでの大量メダル取得は、社会の豊かさの象徴と言うよりは、国家的プロジェクトの成果と言うべきだろう。
 

伊藤洋一 氏伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)

1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/

幻冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。

現在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。

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