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温暖化国際交渉、COP16の意義
コラム
伊藤洋一の『BRICsの衝撃』
進行する砂漠化
急成長の影に悩むベトナム
むろん地球温暖化がこのベトナムにも大きな影響を与えていて、その一つの現象が砂漠化なのであろう。しかし筆者には、農村の困窮もベトナム国土の砂漠化の大きな原因となっているような気がする。
もちろん、実際に行っていないので確信的なことは言えない。しかし、ベトナムの農村は、足早な経済発展を始めた同国にあって、今でも非常に貧しいに違いない。それはハンさんの話を聞いてもわかるし、取材した都市周辺に働きに来ている農村出身の20歳前後の若い人たちの話を聞いても明確である。私が2006年に行って、あまりの貧しさに絶句したインドの農村並みなのではないかと思う。恐らく、年収が日本円で10万円に届かない農家がたくさんあるに違いない。
なぜ行っていないのにわかるかといえば、農村出身の若者が都会で得ている賃金を聞けばわかるのである。彼らは「農村には職がない」「だから都会に出てきて、育ててくれた両親に恩返しをする」と言って都会の工場で働いているのだが、その彼らが得る月収は、低いケースだと6000円くらいである。12倍しても8万円に届かない。それでも、農村にいるよりは所得が多いし、驚くことに、その所得のかなりの部分を田舎の両親に仕送りしている。彼らが出てきた農村の貧しさが容易に想像できる。ハンさんは、「私が出てきた地方を含めて、ベトナムの農村は貧しい」と一言語った。
貧しさと土地の砂漠化は、密接に関連している。インドがそうだったが、貧しさは住民の教育レベルの低さに繋がり、土地や森林の利用の粗雑化に繋がる。切る必要のない木を切ったり、焼き畑農業の拡大に繋がったりする。焼き畑は昔からの慣行かも知れないが、地球環境の変化のなかでは土地全体の砂漠化を大きく促進しかねない。
ベトナム政府も、全人口の4分の1にその影響が及び始めた「砂漠化」に取り組み始めている。植林や防砂林の設置などを進め、住民教育も活発に始めたという。しかし、ベトナムで話を聞いていると、大きな成果は出ていないようだ。ベトナムのような湿度が高い地域、海に近い地域の東南アジアでの砂漠化進行は、日本のわれわれにとっても警告に満ちた話である。ベトナムで起きていることは、日本でも起きうる。また、ベトナムで起きていることは東南アジア全体で起きうる。
中国では、すでに凄まじい勢いで国土の砂漠化が進行している。われわれ日本人は、特に九州など西に住む人々にとっては毎年の黄砂被害は甚大である。森林の伐採、焼き畑などが中国の砂漠化の大きな原因とされる。「あのベトナム」での「砂漠化」は、実に大きな警告になっているように思う。
伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)
1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/
幻冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。
現在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。
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