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温暖化国際交渉、COP16の意義
コラム
伊藤洋一の『BRICsの衝撃』
四川大地震が残した教訓
格差是正と環境保全の努力を
四川大地震の6万人を超える死者のかなりの部分は、「人災被害」の疑いが強い。学校に対する建築基準がきちんと守られていたら、子供の死者の数は、はるかに少なかったのだろう。しかし実際には、地方官吏と建築業者が賄賂などで結託して、脆弱な学校を作り続けていたという。この調査が進めば、中国の行政のひずみが一気に明らかになって、「政権批判」「体制批判」に繋がる可能性も強い。「いったい社会主義という体制で、国民を地震から守れるのか?」という疑問が出て、当然だからだ。
どこの地震でもそうだが、被害の状況は、立っている建物の強度に反比例する。建物が弱いほど、被害が甚大になるのだ。今回の中国、四川省の地震で明らかになったのは、まだら模様の強い中国の発展形態の影の部分である。倒壊は、発展が遅れていたところほど多かった。日本が戦後の50年で遂げた発展を、わずかこの10年で中国は経験していると言われるが、その「急いだ姿」が、「体制の弱点」が、地震であぶり出された印象がする。
四川省は中国でも沿岸部に対する出稼ぎの一番多いところである。出稼ぎ家族の中で就学年齢に達した小学生の多くは、都市の学校に入れず、祖父母を頼って四川省に戻される。そういう子供も数多く被害にあった。しかも、頼りにしていた学校で、である。中国の発展の矛盾が地震で浮かび上がった形だ。都市住民と農村住民を分ける「戸籍」の問題も大きくクローズアップされた。
四川省各地にあると言われる、危険な工場などが抱える問題も浮き彫りになった。いくつかの工場からは、有害な化学物質が漏出したと言われる。また、合計32個の放射性物質が、倒壊したビルなどの下敷きになったとされる。このうち30個は回収、残りの2個もすでに場所を特定し、安全を確保する措置を取ったとされるが、日本の地震でも明らかになった「地震と原子力」の問題が、改めて大きな課題として残った。工場やその他施設の安全基準の見直しが急務である。
四川省での大地震が明らかにしたのは、「地震が他に例を見ない大規模な環境破壊力を持つ」ということだ。自然災害として仕方のない部分もあるが、防げた自然破壊、人命の喪失も多かったのではないか。中国や途上国全体が、そして先進国であっても日本などが抱えた多くの共通の問題が、浮かび上がった災害だった。
伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)
1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/
幻冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。
現在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。
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