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温暖化国際交渉、COP16の意義
コラム
伊藤洋一の『BRICsの衝撃』
ツバルの悲鳴
ツバルが抱えているリスクは大きい。
ツバルのホームページ( http://www.tuvaluislands.com/ )を開いたら、一番重要なところに「Global Warming」の警告があって、いくつかのリンクが張ってある。その最初に出てくる文章が、以下の通りである。2003年9月の国連通常総会の際にツバル代表が語った言葉だ。
「”We live in constant fear of the adverse impacts of climate change. For a coral atoll nation, sea level rise and more severe weather events loom as a growing threat to our entire population. The threat is real and serious, and is of no difference to a slow and insidious form of terrorism against us."」
この最後の文章は胸を打つ。「The threat is real and serious, and is of no difference to a slow and insidious form of terrorism against us」。直訳すると、「(地球温暖化という)その脅威は現実的かつ深刻であり、それは、我々ツバル人に対する緩慢で油断のならないテロと違わない」となる。CO2排出量の増加など、人間活動の増加が地球温暖化に寄与していることは否定しがたいというIPCCの今次報告書を前提とすれば、ツバルに対して「緩慢なるテロ」を行っているのは、米国、中国、インド、それに日本をはじめとする先進国ということになる。
この原稿を書いている時点で、バリ島での一連の地球温暖化対策会議は続行中だ。各国がいろいろな提案をし、ある程度は前進の兆しは見える。しかし、どう見ても、「会議は踊る、されど進まず」(Le congres danse beaucoup, mais il ne marche pas.)の印象が強い。終わったら、また一連のバリ会議についての印象を書いてみたいが、きっと相変わらずの主導権争いが続くにちがいない。世界全体が一つの目標に向かって動ける日は遠い。
ツバルは具体的に、「緊急の調査や対応」「温暖化による被害への補償の仕組み」などを挙げた。その原資としては、「国際運航する航空機や船舶の運賃への課税」を提案した。ただし、会議全体の雰囲気は、「誰の責任か」「誰が先に行動すべきか」のレベルにとどまっていて、「今世紀末には海に沈むかもしれない」と言われるツバルの提案に、丁寧に耳を貸すという雰囲気ではない。
IPCCの報告書は、「地球の温暖化を止めるには、今後20〜30年間の人類の努力が重要である」と、過去、特にこの100年に人類が環境に及ぼした負荷には敢えて言及せずに、「今後」に託した。これはIPCCとして「今後の行動への誘因」をつくりたかったのだろう。「努力すればよくなる」と。
しかし、ツバルの真剣さと関心は、我々の未来への展望より、はるか直近にある。人口1万人弱、広さは東京都の品川区とほぼ同じの太平洋の珊瑚礁からなる国・ツバルにとっては、もしかしたら、IPCCが言う「20〜30年間の努力」というタイムスパンは、あまりにも悠長なのだろう。
伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)
1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/
幻冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。
現在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。
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