異常気象や海面上昇、氷河の崩壊――。温暖化による地球規模での異変が経済や社会を脅かし始めた。未曾有の危機を乗り越えるには、最先端の環境技術を十分に活用することが求められる。環境先進国・日本の新たな挑戦が始まっている。

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温暖化国際交渉、COP16の意義
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温暖化国際交渉、COP16の意義
昨年末、メキシコ・カンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。国連の条約に先進国の数値目標が組み込まれるなどの成果を上げた一方で、「京都議定書延長問題」の議論が激しさを増し、「ポスト京都議定書」の答えは見つからないままだ。低炭素化を目指す世界における、COP16の意義を検証する。
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コラム

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

カーストと貧困のインド[後編]

「貧富の固定化」が生む課題

均等な社会の発展が環境問題解決のカギ

 カーストと環境問題はどうリンクしているのだろうか。インドを旅しながら思ったのは、直接的に貧富にかかわってくるインドのカーストのような制度は、実は環境問題への取り組みを複雑にする可能性が高い、ということだ。筆者はこのコラムを通じて、貧困は人々を生存維持最優先に導くがゆえに、環境への人々の意識や取り組みを希薄化させ、社会全体としての環境問題への取り組みを難しくしている、と指摘してきた。社会を構成する人々の生活水準が全体的に豊かでゆったりしていればこそ、「次の生活水準引き上げのために環境問題に取り組もう」という社会的合意が形成される。

 インドでは、ITが社会の上下関係やカーストの序列を崩しつつあるといっても、依然として「class-driven」(階級が社会を動かす)な側面を強く持つ。低カーストの人は教育を受けていない人が多い。教育を受けなければ高い収入の仕事に就けない。就けなければ貧乏が続く。インドで上位カーストに属して先に豊かになった人々が、例えば貧しき人々による森の木の伐採を止めようと決めても、貧しき人々は燃料がなければ森に入って木を伐採し、薪を作って燃やす。

 一般的に知られていないが、実は中国にも、今後問題になりそうな社会システムがある。それは「戸籍」だ。都市に生まれ、都市に育った人々はその多くが都市戸籍を持つ。それゆえに、子供を都市の学校に通わせられる。農村で生まれるほとんどの中国人が持つ戸籍は「農村戸籍」だ。1億人いるとも言われる中国の出稼ぎ労働者(民工と呼ばれる)は、都市戸籍がないが故に、何年そこで働いても子供を都市の学校に上げることができない。だから中国のほとんどの出稼ぎ労働者は、子供が就学年齢に達すると、子供を田舎の両親に送り返すのだ。

 中国の戸籍制度を階級と呼ぶのは語弊があるかもしれない。しかし、社会の均等な発展を阻害していることは確かだと筆者は思う。均等な社会の発展がなければ、環境に関する社会の合意を形成することはなかなか難しい。筆者は、インドを見てそう思うし、それは中国にも言える。国内の人間を複雑にランク付けし、それによって貧富の格差が生じているとしたら、それは国際的な環境会議でよく対立する途上国と先進国を、これらの国が国内に抱えているということであるからだ。
 

伊藤洋一 氏伊藤 洋一 氏 (いとう よういち)

1950年長野県生まれ。現在、住信基礎研究所主席研究員。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。筆者HPは http://www.ycaster.com/

幻冬舎の月刊誌『ゲーテ』、共同通信社、『日経ビジネス』などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。著書に最新刊として『ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える』(新潮新書2006年)。その他『上品で美しい国家』(ビジネス社 2006年)、『スピードの経済』(日本経済新聞社 1997年)、『ビッグバン時代のネット活用術』(東洋経済新報社 1998年)、『グリーンスパンは神様か』(TBSブリタニカ 2001年)。訳書に『グリーンスパンの魔術』(日本経済新聞社 2000年)『欧州の挑戦』(時事通信社 1992年)など。

現在出演中の番組は、テレビ朝日「やじうまプラス×2」(毎週木曜日朝6時)、関西テレビ「ニュース・アンカー」(毎週火曜日、番組は午後5時から)、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」(土曜日、月1回程度)、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」(毎週金曜日朝7時台)、ラジオNIKKEIの「Roundup World Now」、「Asia today」、「マーケット・トレンド」など。

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